堺総合法律事務所

 

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生活保護基準引下げ違憲訴訟 最高裁判決での勝訴とその後

弁護士 脇山美春

 2025年6月27日、最高裁判所は平成25年度の生活保護基準改定(以下「本件改定」とします)を取り消す判断をしました。

 生活保護基準の改定は、厚生労働大臣の裁量に委ねられています。ただ、なんでもしていいわけではなく、「統計等の客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性」に照らして「判断の過程及び手続に過誤、欠落がある」場合には違法となります。

 引下げにあたっては、専門家の検討を一応経た引下げ(ゆがみ調整)と、専門家の検討を経ずに物価下落だけを理由として行われた引下げ(デフレ調整)の2つがなされ、年間で総額670億円もの生活保護費が削減されることになりました。最高裁は、ゆがみ調整は違法とはしませんでしたが、デフレ調整について、物価下落だけを理由として生活保護費を引き下げる内容の改定をしたことは違法だとして、取消しを認めたのです。

 なお、ゆがみ調整についても違法と判断し、原告らに対する国の賠償責任も認めるべき旨述べた反対意見(宇賀克也裁判長)も付いています。

 この最高裁判決は画期的な判決です。その理由は複数ありますが、3つだけ紹介します。まず、生活保護基準改定そのものが最高裁で違法と判断されたことは、日本において今まで一度もありません。また、年間で670億円もの生活保護費の削減をしたことが違法と判断されたのですから、社会的な影響ははかり知れません。さらに、本件改定は、当時の生活保護バッシングを背景に自民党が政権公約として生活保護費の10%削減を掲げ、その政権公約に基づき実施されたものでした。自民党政治に最高裁がNOを突き付けた、という点でも、非常に画期的です。

 本件改定から10年以上の月日が経ちました。原告らは、「憲法25条に定める健康で文化的な最低限度の生活」以下の生活を長年にわたって強いられています。長期の裁判の間に亡くなった原告もいます。

 国は、最高裁判決を踏まえ、原告らに本来であれば支給していた生活保護費との差額を即刻支払わなければなりません。

 生活保護に対する根強いバッシングが今なお続いています。不正受給の横行、外国人の優遇など、事実に基づかないものばかりです。国が先頭に立って、国民の生活保護に対する誤解を改めるよう説明を行うことも必要です。

 しかし、国は最高裁判決後、対応を検討する専門家委員会を設置し、これまでに複数回会議を実施していますが、原告らや原告ら側の証人となった専門家、弁護団所属の弁護士を誰も委員にしていません。会場傍聴すら認められておらず、当事者をのけ者にした対策会議が続いています。判決から5か月を経過し、高市首相がようやく原告らに謝罪したものの、多数意見で違法とまで判断されなかった「ゆがみ調整」を維持し、原告らへの遡及支給額を極めて低額、もしくは「無し」にしようとしています。

 会議では、「偶発で原告になった人にちょっとおこぼれが余分にありますみたいな解決はあまり適切ではない」等という専門委員の発言もありました。この10年、バッシングに耐えながら、必死に訴訟活動をしてきた原告らを軽視するものであり、非常に許しがたいです。

 結局国は、形だけの謝罪をしただけで、実際には全く反省していないのです。

 生活保護は国民の「命のとりで」です。最高裁判決を踏まえた必要な施策を国に講じさせるためには、国民が生活保護を正しく理解し、国を動かす運動を展開していくことが必要です。皆様には、ぜひ最高裁の判決が出たことを知っていただき、身近な人に広めていただきたく思います。(※本記事は、厚労省と弁護団との折衝が続く最中の2025年11月11日に執筆したものです。この事務所だよりがお手元に届く頃には、情勢が大きく変わっている可能性があることを付言します。)

 

 


 
 
 
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