堺総合法律事務所

 

事件ファイル


児童自立支援施設住民訴訟の報告

弁護士 辰巳創史

  堺市が大阪府に対して行った,児童自立支援施設に関する公金支出の違法性を問う住民訴訟を住民側の代理人として行っていますので,その概要をご報告します。

 

1 公金支出の経緯

 児童自立支援施設とは,不良行為が見られる、またはそのおそれがある子どもや、家庭環境などの理由で生活指導が必要な子どもたちを対象に、個々の状況に応じた指導を行い、自立を支援する施設です。

 政令指定都市である堺市は、児童福祉法に基づき、児童自立支援施設の設置が義務付けられていますが、独自に施設を持っていませんでした。堺市は政令指定都市に移行した平成18年4月1日以降、児童自立支援施設に関する事務について、大阪府に委託を始めました。

 堺市はその後,用地を取得するなど自前の施設整備を検討・計画していましたが、令和元年6月に永藤英機氏が堺市長に就任した後、児童自立支援施設に関する事務事業をゼロベースで見直し、自前の施設整備計画を中断し、大阪府との事務委託の継続に向けて協議を始めました。

 この事務委託を継続するために,何と堺市は,大阪府の所有する児童自立支援施設である修徳学院の新寮舎2棟を建設する費用などを全額負担するという合意をしたのです。堺市の主張によると,この方針は,永藤堺市長と吉村大阪府知事との間で決められたとのことです。

 

2 公金支出の違法性

 原告側(堺市住民)は、これらの支出が地方自治法および地方財政法に違反し、違法・無効であると主張しています。

 すなわち,地方公共団体の事務の処理に必要な経費は、当該地方公共団体が全額負担することとされています(地方財政法9条)。したがって、文化財調査など施設建設に関する調査は大阪府の事務であり、費用を堺市が負担することは地方財政法9条に明白に違反します。

 また,地方自治法27条によれば、都道府県が行う建設事業に対する市町村の負担は、「受益の限度」を超えてはならないとされています。建設される新寮舎は大阪府立施設の一部となり大阪府の所有に帰属するため、大阪府にも受益があるにもかかわらず、堺市が経費を全額負担することは本条の趣旨に反します。また、堺市は建設事業による受益を一切算定しておらず、負担が受益の限度でなされているという根拠が全くありません。

 

3 被告堺市の主張

 被告側(堺市側)は、これらの支出は事務委託を継続するために必要不可欠な費用であり、適法であると反論しています。

 すなわち,修徳学院は堺市に代わって堺市の児童20名を受け入れるために必要な規模の費用であり、新寮舎の建設は、堺市に代わり大阪府(修徳学院)が堺市の児童を受け入れるために必要な施設の整備であるため、堺市が受益の限度で費用負担したものであり、地方自治法27条に違反することはないと主張しています。

 

4 訴訟の行方

 しかしながら,修徳学院は従前から堺市の児童20名を受け入れており,新たに新寮舎2棟を建設することによって,堺市の受入児童が増えるわけではありません。また,新たに建設された新寮舎2棟には,堺市の児童だけが入るわけでもありません。堺市は「受益の範囲内」かどうかを十分に検討した上で,建設費用等を全額負担することにしたのではなく,トップ同士の会談で決めてしまったものです。

 原告側は,これらを決定した永藤堺市長及び吉村大阪府知事の証人申請をしましたが,残念ながら採用されませんでした。

 すでに堺市側の証人及び原告ら本人の証言も終わっており,昨年末に最終準備書面を提出し,本年度内には判決が見込まれます。原告らと代理人弁護士らは勝利を確信しておりますので,堺市民に良い報告ができればと思います。

 


 
 
 
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