弁護士 脇山美春
【法律婚と事実婚の違い】
1 はじめに
選択的夫婦別姓が広く話題になっているのに、一向に導入されない。そんな中で、事実婚を選ぶカップルがいる。私も、2023年9月に夫と事実婚契約を締結した。事実婚と法律婚の違いが気になる方向けに、簡単に紹介する。(特に明記がない場合、民法の条文を引用)
2 法律婚の成立・効力等
(1)法律婚の成立要件
法律婚は、婚姻届を提出することでその効力を生ずる(739条)。
(2) 民法による、法律婚をした場合の主な効力を紹介する。
① 夫婦は同じ氏となる(750条)
② 夫婦の同居、協力、扶助義務/婚姻費用分担義務(752条、760条)
③ 別段の契約をしない限り、夫婦の財産関係は法定財産制度(762条)により(755条)、離婚に伴い夫婦の共有財産につき分割を請求できる(768条)
(3) 戸籍の取り扱い
夫婦は同じ氏となり、称する氏の保有者を筆頭者とする戸籍にもう一方が入る(750条・戸籍法14条、16条1項2項)。
(4) 相続
夫婦は互いの相続財産につき2分の1の法定相続分を有する(890条)。
(5) 税制
配偶者控除、医療費控除、相続税控除等の税制上の控除がある。
(6) 夫婦であることの証明の容易さ
夫婦であることの証明が容易で、緊急手術時の同意の際等の手続きがスムーズである。
3 事実婚のメリット・デメリット
事実婚の場合、前記法律婚の成立要件・効力等は全て生じない。それに伴い、後記メリット・デメリットがある。
(1) 事実婚のメリット:夫婦別姓
事実婚は、婚姻届を提出しない。氏も変わらず、一方の戸籍に入籍もしない。
(2) 事実婚のメリット:オリジナルの権利義務の構築
夫婦間での権利・義務について何等の法的な定めもなく、財産分与についても定めがない。そのため、夫婦の合意によりオリジナルの権利義務を定めることになる。
例えば、同居義務を外したり、関係解消する場合に財産分与の対象財産を決めておける。
なお、財産制度(財産分与の対象となる財産)については、法律婚であっても、別途夫婦で定めをおけば法定財産制度に縛られなくなる(762条)。
(3) デメリット
事実婚の夫婦に前記税制上の控除措置はない。相続権もないため、夫婦の一方に財産を残すには遺言書の作成が必須である。
しかし遺言書によっても「遺贈」になるので、財産を引き継ぐにあたり、相続税控除を受けることはできず、多額の税金を支払うことになる。遺留分権者からの遺留分請求を排斥することもできない。
また、緊急手術の際の同意・病院からの家族への説明等を受けるのに手続きが煩雑となる可能性もある。
4 結びに
私の場合、三代続く弁護士一家との繋がりを明確に残したい一方で、夫に改姓を求めたくなく、デメリットを伴ってでも事実婚の方が幸せだと思い、事実婚を選択した。しかしデメリットはない方がいいため、早急に選択的夫婦別姓を導入すべきだと日々感じている。