堺総合法律事務所

 

事件ファイル


立正運送解雇事件 

弁護士 脇山美春

1 はじめに

 立正運送株式会社(以下「立正運送」とします)と社長を相手として、退職強要・解雇をされた2名の従業員(以下、「原告A」「原告B」とします)が労働契約上の地位の確認を求めて提訴した事件で、勝利的和解をしましたのでご報告します。

2 事件の概要

 立正運送は、高圧ガスのタンクローリー事業を営む貨物運送会社です。原告Aはローリー車の運転手、原告Bは管理職の立場にありました。

 立正運送の堺営業所では、運転手が常時長時間運行を強いられており、法令違反の過積載での運行も強いられ、月200時間を超える時間外労働を強いられる運転手もいました。

 原告Aは労働環境改善のため、2020年4月、16名の従業員と共に「立正運送堺労働組合(以下、単に「本件組合」とします)」を結成し、組合執行委員長に就任しました。本件組合は積極的に団体交渉を行い、労働環境の改善を訴えてきました。本件組合は、一時運転手の過半数が本件組合の組合員になるまでに成長しました。

本件労働組合は、上記違法・過酷な就労環境は問題だと考え、所長や荷主に待遇の改善を何度も訴えてきましたが、まったく改善の見込みはありませんでした。

 そこで原告Aは、原告Bと協力して労働局等の公的機関に、法令違反状態の働き方が常態化していることを申告しました。

 しかし立正運送は、労働環境を改善するどころか、むしろ申告を行った犯人捜しを行い、原告Bに退職を強要し、原告Aを解雇しました。

3 本事件の特色と解決に至る経過

本事件は、新しく労働組合を立ち上げた組合執行委員長が狙われた、典型的な不当労働行為事件であり、かつ内部通報を契機とした典型的な公益通報保護法違反という、令和の時代には少し珍しい事件でした。

原告Aと原告Bが、二人で提訴したおかげで、事件の経過を裁判所によりクリアに伝えることができ、原告Aの所持していた録音データを原告Bの証拠とすることができたりしました。労働者が共同して提訴できたという点も、この事件のよい特徴の一つでした。

結果、裁判所は原告の主張通りの心証を抱き、原告Bの退職の意思表示の取消、原告A

の解雇を無効とする内容の和解を勝ち取ることができました。

労働組合を立ち上げて闘う意義、及び広く共同してたたかう意義を教えてくれる例となる事件でした。

 


 
 
 
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