弁護士 平山正和・井上耕史
2006年に建築・分譲されたマンションの事例である。本件のマンションは、竣工から2年も経たない2008年に外壁タイルが剥落する事故が発生した。その後も断続的・継続的に外壁タイルの浮き・剥離が発生し、その都度、管理組合の要求に応じて、施工業者が無償で補修工事を行ってきた。ところが、分譲から10年を経過した2017年に入ると、施工業者は今後の補修工事は有償になると通告してきた。やむなく、管理組合は、2017年の大規模修繕工事に合わせて自費で別の業者に補修工事を依頼した。この時に補修を要したタイルの浮き・ひび割れの面積は、外壁タイルの総面積の14%を超えていた。
施工不良等を理由とする損害賠償請求
管理組合が建築士に調査を依頼したところ、大量の浮き・剥離が生じた原因は、外壁タイルの下地処理の施工不良にあることが判明した。すなわち、建物本体壁面のコンクリート面(下地面)にタイルを貼り付ける際には、貼り付けモルタルの接着力を高めるため、目荒らし(超高圧水を吹き付けるなどしてコンクリート表面を荒らす作業)等の方法により、あらかじめ下地面に凹凸をつける必要があるところ、このマンション工事では全く行われておらず、下地面が平滑の状態でタイルを貼り付けていたものである。
管理組合側は、販売業者と施工業者を被告として、損害賠償を請求して裁判所に提訴。業者側は施工不良はないと主張したが、裁判所と専門委員(裁判所から選任された建築士)の現地見分も経て施工不良があったことが明確となり、2023年3月、業者側が補修に要した実費相当額の解決金を支払う内容での和解が成立した。
全国的に起こっている外壁タイル問題
外壁タイルの剥離・剥落を防止するため、目荒らし等により下地コンクリート面に凹凸をつけることは必須である。このことは、既に2005年には、建築学会の文献により明らかにされていた。しかし、目荒らしを怠った施工不良の事例は後を絶たず、竣工・分譲から長期間経過後に紛争となる例が見受けられる。本件マンションと同じ頃に建築された別のマンションでのタイル剥落訴訟では、1億円超の支払義務を認める和解が成立したことが新聞で報道されている。
このように、外壁タイルの剥離・剥落問題は全国的に起こっている。この報告がこうした紛争解決の一助になれば幸いである。