弁護士 村田浩治
堺市の学童保育事業は、1997年に堺市からの委託事業者として公的性格をもつ公益財団法人堺市教育スポーツ振興事業団が指導員を雇用して運営してきました。しかし2017年から3年期限のプロポーザル(入札)方式を導入し、民間企業も含めた受託事業者を選考する形となりました。しかし、「公的な事業」を「利益をあげないと運営できない企業」の競争にゆだねる方がいいという検証はされていません。共同して学童保育をつくってきた保護者と労働組合は当然のごとく反対運動を展開しました。
制度は強行されましたが、堺市は保護者に対して指導員の継続雇用を求めていくという説明をしていました。しかし、東区のある小学校の学童保育で、保護者と児童の信頼も厚かった主任指導員は、労働組合の副委員長でもあり、新しい事業者の説明する労働条件に対して疑問点を何度も指摘し、問い質していたところ、副委員長が応募する前に、事業所は採用しないと通告してきました。
堺市教育委員会の記録で、採用拒否した事業所の代表者が①「労働組合の活動の一環として堺市の学童保育事業のプロポーザル方式制度に反対の立場で運動に関わっていたこと」②「指導員採用時の雇用条件の質問を何度も小出しに聞いていたこと」③「再度の話し合いに組合役員を同席させること」を嫌っていたこと等が明らかとなりました。
事業者の拒否理由が労働組合活動にあることは明らかでした。このような採用拒否は組合員であることを理由とした不利益取り扱いであり、労働組合法7条で救済されるはずです。しかし、大阪府労働委員会も中央労働委員会も東京地裁も「採用拒否が組合嫌悪であったとまでは言えない。」「採用拒否に労働組合法7条は適用がない」という不当判断をしました。
控訴審の東京高裁は、昨年8月、採用拒否にも労働組合法7条の適用をうける場合があることは認めながら、堺市教育委員会の記録は無視し不当労働行為と認定しませんでした。
2023年も、新たな事業者が組合役員3名全員を1度は採用拒否するという事件が起きました。これからも同様の行為がされる危険のある行為を放置できないと、労働組合は最高裁まで闘う決意をしました。市民のみなさんの応援をお願いします。