弁護士 村田浩治
Q1 解雇の金銭解決制度という法律ができるのに労働組合は反対していると聞きました。なぜですか。
A 使用者による解雇で、「合理的理由を欠き、社会通念上相当性を欠く場合には解雇権の濫用」となり無効となります(労働契約法16条)。
現行制度では、不当な解雇については仕事をさせなかったのは使用者の責任となるので、仕事をさせなかった期間も含めて賃金が請求できます。例えば、2022年1月に解雇されて2023年1月に判決が出て解雇が無効となれば、1年分の賃金を支払う義務が使用者に残ります。その間生活のために仕事をしていた場合でも60パーセントの休業補償義務が使用者にあるし、仮の賃金支払いを求めることが出来ます。金銭解決制度等なくても労働者が解雇が無効だと主張して争えば金銭補償は受けられるのです。
現行法でも、解雇に対する規制がされ金銭補償がされるのだから、わざわざ金銭解決制度を法制化する必要はありません。仮に解雇の金銭解決制度が出来てしまえば、使用者が金銭さえ支払えば、解雇ができるという制度を悪用し、使用者に気に入らない労働者や労働組合員を狙いうちにして解雇し金銭を求めることが可能となってしまいます。また金さえ払えば使用者が労働者を解雇できるという感覚が助長されかねません。金銭解決制度は百害あって一利なしの制度なのです。
むしろ現行法を使いやすくするように迅速に賃金仮払いを求める制度を作ったり、懲罰的賠償といって解雇をするような使用者に民事上の罰金を課すというような制度をつくるべきだと思います。現行法でも解雇を無効と争えます。解雇されても諦めないでいいのです。「解雇に分かりました」と返事をすると不利になります。返事する前に必ず弁護士に相談してください。