堺総合法律事務所

 

事件ファイル


偽装請負・差別雇用を正し雇用責任を追及しましょう

弁護士 村田浩治

1 偽装請負はなぜゆるされないのか

  私は、約30年の間、事務所ニュースに沢山の「偽装請負」事件を紹介してきました。テレビ放送のヘアメイク、電車の誘導作業従事者、ごみ焼却場の作業者、一般事務、工員、管理栄養士、公用車運転手、タンクローリー運転手、指示を受けている会社と違う下請で雇われて、文句を言うと会社ごと契約を切られたりするため、悔しい思いをさせられてきた人たちです。

  下請で働いているのに、雇っている人間は、指示も安全管理の責任も果たさず利益を得るだけという働かせ方は違法です。それは、人に命令する権限がない人間が命令を与えて仕事をさせて利益を得ているのに、責任を負わず、利益を得るようなことが「人間の尊厳」を損ない、人を物扱いにするのと同じだからです。このような働かせ方は「中間搾取」「労務供給」と呼ばれ、今でも職業安定法で刑罰付きで禁止されています。国が仕事を探す責任を負い、労働者供給を禁止した職業安定法が出来た時、「人間を鉄や石炭のように勝手に売買することを禁止し、労働者を一人前の人間として扱うための法律が出来た」と説明されました。

2 1985年「戦後政治の総決算」で生まれた派遣法と制限

  この規制を一部外したのが1985年の中曽根内閣が作った労働者派遣法でした。こうした規制を「緩和」し会社が自由に活動出来るようにして、国はあれこれ口を出さないという政策が拡大し、小泉、安倍内閣ではさらに拡大しました。「医療」や「行政サービス」は縮小し、使用者の権限を強めた政策は、2008年に大量の派遣切り事件となり、年末には「派遣村」が開村され、自民党政治が一時退場となったことは40代以上の方なら覚えておられることでしょう。2012年に派遣法が改正され偽装請負の労働者を保護するため、派遣先の雇用責任を負わす「みなし雇用申込み制度」という派遣労働者保護規定が出来ました。

3 派遣先の使用者責任を追及し、逆転勝訴を目指しています

  東リ伊丹工場の偽装請負事件で、みなし申込みによる雇用責任が初めて認められ労働者が5年越しの闘いを経て勝訴し最高裁で確定しました。しかし私が関わる他の三つの事件(堺の大阪医療刑務所の運転手、堺石津のタンクローリー運転手、竹中工務店での設計者)はすべて一審で労働者側が敗訴しました。すべて大阪高裁で控訴中です。1勝3敗では民主党政権時代に誕生した労働者保護制度が無意味となります。大阪高裁で三つの事件の逆転勝訴を目指しています。

 

 


 
 
 
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