堺総合法律事務所

 

事件ファイル


りんくう総合医療センター未払割増賃金請求事件・勝利和解

弁護士 井上耕史

 

医療従事者155名が提訴

 

 地方独立行政法人りんくう総合医療センター(旧泉佐野市民病院)では,交代制勤務の職員(看護師・薬剤師)について,就業規則では3交代制として定められているのに,就業規則を改正しないまま,2交代制で働かせていた。これは違法な変形労働時間制であり,通常の労働者と同様に割増賃金を支払う必要があった。

 また,病院では,宿日直勤務の職員(診療放射線技師等)に対して,定額の手当の支払と患者対応に従事した時間に対する割増賃金の支払のみが行われていた。しかし,実際には,宿日直の時間帯であっても,通常の業務と異ならない患者対応等の業務に従事していた。したがって,宿日直の拘束時間全部について割増賃金を支払う必要があった。

 労基署から是正勧告がなされたにもかかわらず,法人は割増賃金の一部しか支払わなかった。そこで,2018年9月19日の第1次提訴以降,4次にわたり,看護師,薬剤師,診療放射線技師等の医療従事者計155名が,法人に対して,割増賃金総額2億3千万円余の支払等を求めて大阪地裁堺支部に提訴した。

 

 勝利和解へ

 

 争点は多岐にわたり,論戦が続いていたが,新型コロナウイルス感染症の蔓延という事態を受けて,職員が安全・安心できる職場環境のもとで一丸となって働き,感染拡大防止と治療体制の確保を図るべく,2021年5月20日に同支部で和解成立となった。

 和解内容は,①病院が長年にわたり職員を違法に働かせて労基署から是正勧告を受けたことを重く受け止めて法令遵守に努めることを約束する,②病院が一定の解決金を支払う,というものである。

 

 労働組合の力で職場環境改善へ

 

 本件の発端は,病院当局が,職場の労働組合(りんくう労組)と協議することなく,一方的に職員の賃金を削減したことによるものであった。労組がこうした問題を追及する中で,当局が違法な交代制勤務・宿日直勤務をさせていたことが発覚し,違法な働き方を是正させる組合活動の一環として,労基署への申告を経て,裁判に取り組んだ。

 また,裁判に取り組む中で,組合員数を大きく増やし,従業員代表に労組委員長が選出されるなど,職場での存在感を高めてきた。

 働く人々が団結して職場の労働環境改善を実現する,こうした取組みがもっと広がることを期待したい。

 

 


 
 
 
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