堺総合法律事務所

 

事件ファイル


フジ住宅と会長のハラスメントを認め、慰謝料110万円を命じる

弁護士 村田浩治

 

 5年前に事務所ニュースでもお知らせしていました「フジ住宅ヘイトハラスメント事件」は2020年7月2日に大阪地裁堺支部が、フジ住宅と会長が連帯して110万円を原告に支払うよう命じる原告勝訴の判決を言い渡しました。

 

フジ住宅の違法行為

(1)創業者である今井光郎会長は、社内で全従業員に、ヘイトスピーチ表現を含む、政治家の論文や評論家の書籍などを大量かつ反復継続的に配布していました。「在日はしねよ」「息を吐くように嘘をつく○○民族」「○人」といった差別表現です。また「従軍慰安婦は高級娼婦」という歴史をねじ曲げて差別を助長するものもありました。しかし会長らはヘイト表現があることを認めながら、文書は「社員教育であり、誤った歴史観をただす目的で正当だと主張し続けました。(2)また誤った歴史観を正す目的の一環として中学校教科書の採択にあたり全従業員に対し、特定の教科書が採択されるようアンケートの提出等の運動に従事するよう勧奨しました。(3)さらに、原告が違法だと訴えたことを「恩を仇で返すばか者」と非難する同僚従業員らの感想文をコピーして全従業員に配布しました。

 

「差別を受けないという内心の静穏」の侵害

 判決は、(1)職場の労働者が、他者の自己の欲しない言動により心の静穏を乱されない利益を有しており「就業場所において、国籍によって差別的取扱いを受けるおそれがないという労働者の内心の静穏はより一層保護されるべき」と判断しました。また(2)教科書採択活動への勧奨行為も、業務と関連しない政治活動であり、労働者である原告の政治的な思想・信条の自由を侵害する差別的取扱いを伴い、社会的に許容できる限度を超えているとしました。さらに(3)提訴直後の原告を非難する感想文の配布も、不法行為の救済を求め訴えた原告への報復であり原告を社内で孤立化させ原告の「裁判を受ける権利を抑圧し、職場において自由な人間関係を形成する自由や名誉感情を侵害する」とし、会社の三つの行為をすべて違法だと断罪したのです。

 しかし、差別表現文書が原告に向けられた差別ではないとした点で、判決には不十分な点もあります。会社は全く反省せず控訴しており、闘いは大阪高等裁判所に移りました。 日本社会と企業のあり方を問い直し、差別を許さず民主主義の基礎となる思想信条の自由の保障は、日本人にとっても大切な問題です。日本社会をよくするため引き続き原告への応援をお願いします。

 


 
 
 
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