堺総合法律事務所

 

事件ファイル


封印を解いて真相解明を!―参院選「ゼロ票」事件で堺市を提訴

弁護士 井上耕史

「ゼロ票」事件とは

 一昨年7月の参院比例代表選挙において,堺市美原区の住民が,日本共産党の山下よしき氏(党副委員長・当選)に投票した。ところが,美原区の開票結果では,山下氏の得票は0票とされてしまった。過去の選挙結果からしても,他地区の開票結果からしても,あり得ない結果であり,開票作業に誤りがあったことは明白である。しかし,堺市の選挙管理委員会は,誤りを認めず,調査も拒否した。

 そこで,昨年3月,裁判を通じて真相を究明するほかない,と考えた美原区の住民10名が,堺市を相手取って大阪地裁堺支部に慰謝料等の支払を求める訴訟を提起した。

 

 誤集計の原因

 大阪府内の開票結果を調べたところ,美原区では,山下よしき氏と同じ「山下」姓の別の候補者A氏(国民民主党・落選)の得票が他地区に比べて不自然に多いことが判明した。美原区では,山下よしき候補に対する投票を,誤ってA氏の得票に計上したことが強く疑われる。

 投票用紙は梱包・封印されて保管されているが,この封印を解いてA氏の得票とされた票を確認すれば真相が明らかとなる。今後,弁護団では,投票用紙の検証を裁判所に申し立てる予定である。

 

「ゼロ票」裁判の意義

 この参院選例代表選挙では,静岡県内で「山田太郎」票が誤って「山本太郎」票とされて山田氏が0票とされた例や,千葉県内で某候補の得票を誤って無効票に計上して0票とされた例が報道されている(いずれも選管が原因を公表し,謝罪した上で票数を訂正)。

このように「ゼロ票」問題は全国的に発生している。その背景として,市区町村職員の大幅な削減に加え,参院選に非拘束名簿式比例代表制(政党名でも個人名でも投票可能)が導入され,集計が複雑になったことが指摘されている。そうすると,「ゼロ票」を含む選挙事務のミスは構造的問題であり,美原区の事件は氷山の一角に過ぎない。

選挙に対する国民の信頼を取り戻すためにも,本件訴訟を通じて真相の解明と再発防止体制の構築が求められている。ご支援を宜しくお願いします。

 


 
 
 
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