弁護士 辰巳創史
全国B型肝炎訴訟とは
日本では1948年以降,全ての国民・住民は予防接種法等によって,幼少期に集団予防接種を強制的に受けさせられてきました。その際の注射器注射針または注射筒が連続使用されたことが原因で国民・住民がB型肝炎ウイルスに感染させられました。
これらの感染被害者が国の法的責任に基づく損害賠償等を求めた裁判が全国B型肝炎訴訟です。国の責任については、これを認める最高裁判所の判決が2006年6月に出されていました。しかし、当時の原告が同じ被害者全体の救済対策を取ることを求めたにもかかわらず、国・厚生労働省はこれを拒否したため、2008年より、全国10地裁で被害者が集団で提訴して戦い,苦難の末、2011年6月23日に国との間で基本合意を締結しました。私も2008年から弁護団の一員として活動しています。
個別の被害者救済は道半ば
厚生労働省の推計でも,注射器注射針または注射筒が連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに感染した被害者は40万人以上いると言われています。
ところが,基本合意から8年を経過した現在でも,提訴した患者数は3万人弱であり(2019年9月現在,全国B型肝炎訴訟弁護団集計),想定される被害者の1割にも達していません。
キャリア患者など,感染していることに気づいていない人も多いため,一生に一度の肝炎ウイルス検査を広く呼び掛けるとともに,B型肝炎患者を救済する特別措置法の周知をさらに図る必要があります。
医療費助成制度の創設
私たち弁護団は,日本肝臓病患者団体協議会(日肝協),薬害肝炎原告団・弁護団とともに,肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成制度の創設等を求めて,請願署名活動等に取り組んできました。
その結果,2018年の通常国会において平成30年度予算が成立し,ウイルス性肝硬変・肝がん医療費を助成するあらたな制度が創設されることとなりました。
しかし,2018年12月から制度はスタートしたものの,申請件数は190件にとどまっており,厚生労働省が想定していた7000名を大きく下回っています。
制度の適用対象をいっそう拡充すべきことを主張して,今後も運動を継続していく必要があります。
以上