堺総合法律事務所

 

事件ファイル


「コンビニ窃盗冤罪事件」

弁護士 辰巳創史

 

1 事案の概要

  本件は,2012年6月16日午前2時31分ころ,犯人が,泉大津市所在のコンビニエンスストアで,商品の購入を装って代金を支払い,応対した店員がレジスターを開けた隙に,レジスターから現金1万円をつかみ取ったという事件であり,事件から2か月近く経過した同年8月7日に被害店の近くに両親と住んでいた当時21歳の男性(以下,「Aさん」といいます。)が強盗罪の被疑事実で逮捕されました。

  Aさんは,逮捕当初から事件について否認しており,両親からの依頼で接見した当事務所の平山正和弁護士の指導で取調べに対して黙秘を貫きました。

  同年8月28日,Aさんは否認したまま窃盗罪で起訴されました。

 

2 裁判の経過

検察官が,Aさんが犯人であるとする証拠は,①応対したコンビニエンスストアの店員が写真面割によってAさんが犯人と特定したこと,②防犯カメラの映像で録画された犯人の映像とAさんとが高い類似度を有すること,③Aさんの指紋がコンビニエンスストア出入口自動ドアの外側のガラス面から採取されたことです。

Aさんは,本件事件について全く身に覚えがありませんでしたが,事件当時の自身の行動についても,事件から2か月近く経過していたことから,当初は正確に思い出せませんでした。しかし,携帯電話のメールの履歴や両親の記憶などから,事件の前日である6月15日の夜から友人が自宅に遊びに来て,事件当時は,友人と共にAさんの部屋でサッカーの試合をテレビで見ていたことが明らかとなりました。しかも,本件犯行時刻の約15分前に,友人とお互いの携帯電話で撮影し合った写真が画像データとして保存されていました。つまり,Aさんにはアリバイがあったのです。

しかし,自動ドアのガラスにAさんの指紋が付着していた理由については,起訴直後はわかりませんでした。しかし,起訴後に弁護人が要求して,検察官は,被害店内の7台のカメラによる映像(DVD)を開示しました。DVD映像は,24時間営業のコンビニエンスストアの数日分が記録されており,実に長大なものでしたが,Aさんの母親が,それこそ必死の思いで映像を見続けました。そして,ついに事件の5日前である6月11日に,Aさんが入店の際に指紋の検出場所と完全に一致する自動ドアのガラス面に指を押し付けている映像を発見し,指紋の謎が解けました。

2014年7月8日,裁判所は,Aさんに無罪の判決を言い渡し,判決は7月23日に確定しました。

この間,公判は16回を数え,Aさんは,2年の長きにわたって被告人の地位に置かれ続けただけでなく,保釈許可決定を受け釈放されるまで,302日間の身体拘束を受けました。

 

3 国家賠償請求

  無罪判決が確定してから,Aさんは警察・検察に対し,謝罪を求めましたが,一切謝罪はありませんでした。

  そこで,Aさんは,平成2015年1月22日,国家賠償請求訴訟を提起しました。お金が欲しいのではなく,警察・検察に謝ってほしい,冤罪を生んだ原因を解明して,二度と冤罪をなくしてほしいとの思いからです。

Aさんは,捜査段階・公判段階で警察・検察がどういう判断をしてAさんを犯人であると考えたのか真実を明らかにするために,検察官2名,警察官2名の人証申請をしました。

  しかし,大阪地裁は,驚くべきことに上記の証人を一人も採用せず,Aさん本人を調べただけで,警察にも検察にも過失はなかったという判決をしました。

  Aさんは,直ちに控訴しましたが,控訴審の大阪高裁も警察官,検察官の証人を一人も採用せず,控訴棄却の判決をしました。

  冤罪を生んだ原因を徹底的に究明することなく,捜査機関の過失はなかったと判断する裁判所の姿勢は,厳しく弾劾されるべきです。

  Aさんは,第2,第3のAさんを生まないために,上告をしてたたかいを続けています。皆様のご支援を宜しくお願いします。

 


               

 


 
 
 
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