堺総合法律事務所

 

事件ファイル


名護屋城跡、玄海原発  安倍政権の愚挙を思う

弁護士 平山正和

 唐津市で開催された自由法曹団総会の機会に、名護屋城跡、玄海原発を訪れた際の所感2題。  
■名護屋城跡と戦争法
  玄海灘に面した岬の丘の上に名護屋城跡がある。城址を訪れて改めて秀吉の朝鮮侵略の暴挙を想像することができた。百聞は一見に如かず。
  秀吉は天下を統一するや1592年に朝鮮、明の侵略に乗り出し、1598年の秀吉死去による撤収まで朝鮮半島において暴虐の限りを尽くした(日本では文禄・慶長の「役」と呼んでごまかしているが、日本の一方的な侵略行為であった)。
  その侵略の拠点として秀吉が築城した名護屋城の規模は大阪城に匹敵するほどであり、豪華さは聚楽第に劣らぬものであったという。秀吉は30万人余の大名、武士たちを駆り集め、10万人とも16万人ともいう侵略軍として朝鮮へ派兵し、16万人を名護屋城や周囲の陣屋に待機させたという。玄界灘の先には壱岐、対馬、朝鮮半島があるという朝鮮侵略という軍事的地の利だけから荒地に大都市を出現させた。驚くことに、秀吉死去後、間もなくこの巨大な城や陣屋などは破却され、石垣の一部が残るだけとなって、夢まぼろしのごとく消失した。太閤が睨みし海の霞かな(月斗)の句碑が建っていたが、秀吉の耄碌によるとしか考えられない妄想、愚挙を霞のごときものとしたのであろう。秀吉の愚挙の爪痕玄海秋雨(正和)は私の駄作である。
 城跡のそばに立派な佐賀県立名護屋城博物館がある。その展示は、文禄・慶長の「役」を秀吉の朝鮮侵略であるとし、明治から太平洋戦争敗戦までの朝鮮半島に対する日本の行為を侵略であると説明している。すなわち、太平洋戦争に至る朝鮮侵略は秀吉の朝鮮侵略を数値化できないほど拡大したものであることがよく理解できる。よくできている。
  名護屋城跡は、安倍首相をはじめとする「日本会議」に巣くう歴史修正主義者たちの嘘を暴露する恰好の証拠である。戦争法に基づき、いよいよ戦闘行為を任務として付与して自衛隊を南スーダンPKOに派遣して「戦争する国」、「富国強兵」へ突き進む安倍首相は、名護屋城跡を見て秀吉の妄想、愚挙から学ぶべきである。そのような知性を求めるのは無理なことであろうが。
■玄海原発と原発推進の愚挙
 名護屋城跡のすぐ近くに九電の玄海原発1~4号機がある。日本全国の原発とまったく同様に人がまばらな僻地に隠れるようにして建っているのは、小出裕章氏が言うように、原発が危険であることを熟知していることを示している。3,4号機は新規制基準に基づく審査をクリアした状態で再稼動をめざしている。
 原発に隣接して、原発の安全性を宣伝するための、玄海エネルギーパーク、九州全域の伝統工芸・芸能を紹介する九州ふるさと館、原発の廃熱を利用した観賞用温室がある。いずれもたっぷりと金をかけた立派な施設である。ことに、ふるさと館は見ごたえのある施設であるが、これで人を呼び込もうとする魂胆が透けて見える。周辺市町村は唐津市と合併したが、原発が立地する玄海町だけは合併していない。原発マネーを享受するためであり、命よりも金だとばかりに町は露骨にも再稼動を求めている。
   私と妻以外には訪問者は皆無であったが、手持ちぶさただったのか、入館するとすぐに若い女性がガイドしてくれる。そのガイドは、福島原発事故などなかったかのごとく、玄海原発は安全だ、安い電力を供給すると確信をもって説明する。安全神話を振りまき、莫大な金をかけて設置した原発のプラントを廃棄する愚はありえない、稼働して儲けさえすればよいとする九電の考えのオウム返しだ。
   原発を捨てない、電力会社、原発メーカー、電力会社労組、御用学者、安倍内閣の原子力マフィアは息を吹き返しているが、鹿児島、新潟の反原発知事誕生は原発廃止、再生可能エネルギーへの転換への光明だ。
               

 


 
 
 
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