ブラック企業が蔓延しかねない労働法改悪の動き
弁護士 村田浩治
一、労働規制は憲法から
最近、「ブラック企業」という言葉を報道番組で聞かれることが多いのではないでしょうか。私も昨年に、ラジオの番組に出演し、労働基準法を無視し、若者を長時間働かせ、使い捨てにするブラック企業の問題を話させていただきました。
労働基準法を無視することは、最低の基準以下の労働条件での就労を強いて働く人たちの心身の健康をむしばむ行為です。だから、ブラック企業対策として最も有効なのは、社会全体で労働基準法を守り守らせるという意識と取組みを実行することだと思います。
日本では、国の基本法である憲法の二七条で勤労の権利と義務を定めた「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」(二七条)と規定しており、労働基準法はこの憲法に基づいて制定されています。
二、安倍内閣の労働政策
こうした労働規制に対し、一昨年の衆議院選挙、昨年の参議院選挙で勝利した自民党の安倍政権の下で現在、この最低基準を示す労働規制を緩和しようとする動きが加速しています。
二〇一三年六月一四日、安倍政権は閣議決定で「骨太の方針」「日本再興戦略」「規制改革実施計画」という方針を打ち出しています。
大きく見ると以下の四つの内容を明らかにしました。
1 雇用維持から移動支援
2民間人材ビジネスの活用
3多様な働きかたの実現
4女性の活躍推進
このような施策の具体化として、①正社員の中に転勤のない地域限定社員などを法律で位置づける。
②人材ビジネスを広く認める。
③労働時間の規制緩和。
④派遣業務の規制緩和。
さらには⑤有期契約社員などの規制を緩和する国家戦略特区構想の打ち出しなど、景気回復、経済復興のためには、労働規制が邪魔だと言わんばかりの方針が打ち出されています。
三、本末転倒の規制緩和
派遣労働では、本来は一時的な業務に限定され、正社員に替わる雇い方は禁じられてきたのですが、派遣会社が期限なく雇えば派遣で使い続けることができるよう法律を変えようとしています。しかし派遣会社は仕事があって初めて人を雇えるのだから仕事がなくなれば即解雇となりえます。
さらに特別の地域をつくって有期契約も5年たったら期間なしでずっと雇わなければならないため特別区に限って10年の契約期間を設定したり、自由に契約を解除出来るようさだめようとします。
経済のため、労働規制を企業の活動がやりやすいようにして活性化しようというものです。しかし、経済の源は労働者の健康です。現在の特区構想は、経済のために働く人の生活の安定を破壊し、健康を蝕むものです。年末から年始にかけて規制緩和が企まれています。反対の声を上げる必要があります。