堺総合法律事務所

 

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法律相談

弁護士 村田浩治

Q、私は、5年前に夫を亡くし、現在、働きながら子ども二人を育てています。

 先日、突然、夫の兄の住宅ローンの支払いが滞っているとして、夫に対して保証人として3000万円の支払をするよう督促が来ました。びっくりして、夫はすでに亡くなっていると銀行に電話したら、「夫の負債について相続人である私や子どもに督促することになります」と言われました。私は夫の債務について支払をしなければならないのでしょうか?

 

A、個人の負債がある場合、死亡しても債務が消滅するわけではなく、相続が起こります。相続というのは、亡くなった方の法律上の権利義務を引き継ぐのが原則で、これを包括承継といいます。権利によっては、これを引き継がないとされているものもあり、たとえば年金を受け取る権利は、死亡によって消滅し、年金で生活を維持されていた方などには別途検討されます。

 そのような例外を除いて相続はあらゆる権利と義務をすべて承継するので、ご質問のようなケースでも、債務が継承される場合があります。この事例の場合は、3000万円の負債を法定相続分に応じて、負債は分割して相続が起こることになります。つまり妻には2分の1の1500万円、子どもさんお一人にそれぞれ4分の1の750万円ずつの債務が相続されてしまいます。

 但し、相続は放棄することが出来ますので負債だけの場合は相続放棄することで負債を承継することは避けられます。放棄をすると最初から相続しなかったことになりますので、負債は一切負いません。たとえば子どもさんお二人が放棄すれば、亡くなった夫の両親が生きていれば、奥さんが3分の2、両親が3分の1を引き継ぐという具合です。奥さんも子どもさんも放棄すれば、両親が生きていれば両親へ、両親がなくなっていれば、兄弟が相続しますので、相続放棄した段階から順次相続放棄の手続きをしていく必要があります。

 相続放棄は、「相続開始を知った時」から3ヶ月以内にしなければなりません。相続開始から3ヶ月ではなく、相続開始を知った時から3ヶ月の場合なので、本件のように夫が死亡して5年もたっている場合でも、負債があることを知った時、つまり銀行からの督促状が届いた時から3ヶ月以内に放棄をすればいいのです。ただ、相続放棄をしてしまうと、家や貯金などのプラスの遺産についても権利がなくなります。保険金などがある場合もあるので、その場合は限定承認などの検討も必要となりますので、どうしていいか分からない場合は出来るだけ早く弁護士に相談されることをおすすめします。

 


 
 
 
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