堺総合法律事務所

 

事件ファイル


ダイキン雇止め事件 いよいよ山場へ

弁護士 井上耕史

 一 ダイキン雇止め無効訴訟とは
 ダイキン工業堺製作所の臨海工場と金岡工場では,「支援従業員」と呼ばれる業務請負会社が雇い入れた労働者が空調機の製造業務に就労していた。製造ラインには請負会社を異にする支援従業員及びダイキン社員が混在し,組長と呼ばれるダイキン社員から指揮命令を受けて就労しており,いわゆる偽装請負の状態であった。
 ダイキンは,大阪労働局から偽装請負を是正せよとの指導を受け,平成二〇年三月一日から,支援従業員を「有期間社員」として直接雇用した。しかし,その契約形態は,当初六か月,その後一年,一年の更新で,最長が二年六か月であり,三回目以降の更新はしないというものであった。
 ダイキンは,平成二二年二月以降,二四〇名以上を新たに有期契約で雇用する一方,契約期間の満了となる同年八月三一日をもって,二〇三名もの有期間社員を雇止めにした。有期間社員の大量入替えが行われたのである。
 これに対し,ダイキンの雇止めは無効として,昨年九月一日,四名の有期間社員が大阪地裁に提訴した。

二 ダイキンの脱法行為は明白
 訴訟の中で,次々と雇止めの実態が明らかとなってきている。
・ダイキンは偽装請負を適法な請負に切り替えることが不可能であったために直接雇用するしかなかった。
・ダイキンは本件雇止め以後も有期間社員を募集し,平成二二年二月から平成二三年二月までの間に三三五名も新規に雇用していた。
・直接雇用時に有期間社員としたのは景気の先行きが不透明であったから。つまり,切りたい時にいつでもクビを切れるようにする目的であることが明らかになった。
・なぜ雇止めをする必要があったのかとの質問には,ダイキンは一切答えず,期間が満了したからということしか言わない。
 このように,ダイキンの雇止めは雇用ルール(解雇権濫用法理)の脱法行為であることが,いよいよ明白となったのである。

三 非正規労働者の人権を守るたたかいに
 原告らは,ダイキンで八年ないし二〇年にわたって働いてきたのであり,このような使い捨てが許されて良いはずはない。国会でも,共産党の山下よしき参院議員の追及に対し,菅直人首相(当時)も,「働くみなさんに大変負担をかける不合理な扱い」と認めたほどである。
 ところが,民主党は,継続審議中の労働者派遣法改正案について,「製造業派遣・登録型派遣の原則禁止条項を削除」「日雇い派遣禁止の緩和」「違法派遣があった場合のみなし雇用制度の施行は3年後に延期」と,大幅に改悪して骨抜きにしようとしている。自らの選挙公約も反故にして,自民・公明と一体化したのである。これでは不安定雇用は野放しのままである。
 何としても,この雇止め無効訴訟に勝利して,非正規労働者の人権を守る方向へ政策を転換させたいと思う。
 訴訟は,毎回傍聴席を埋め尽くす支援者の見守る中,争点整理はほぼ終了し,いよいよ証人尋問というところにさしかかってきた。今後より一層の支援をお願いする次第である。


 
 
 
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