弁護士 辰巳創史
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1 はじめに
2011年6月28日,B型肝炎訴訟の原告団・弁護団と国との間で,B型肝炎被害者に対して国が正式に謝罪し,被害者を和解によって救済する基準などを定めた「基本合意」が成立しました。
B型肝炎訴訟大阪弁護団の弁護団員として,そして原告の一人として私も参加してきたB型肝炎訴訟について,報告いたします。
2 B型肝炎訴訟とは
B型肝炎は,B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の病気です。
一般に,成人が初めてHBVに感染した場合,そのほとんどは「一過性の感染」で治癒し,臨床的には終生免疫を獲得し,再び感染することはありません。
しかし,集団予防接種等により,乳幼児期(0~6歳)にHBVに感染した場合,HBVを異物と判断できずにHBVに持続感染してしまいます。
この訴訟は,
① 集団予防接種でHBVに持続感染したキャリア・慢性肝炎・肝硬変・肝がんなどの患者,及びこれによって死亡した被害者の個別の救済を図るとともに,
② 全てのウイルス性肝炎患者が差別・偏見なく安心して治療をうけ生活ができる社会をつくること(恒久対策)
を目的としたものです。
3 基本合意が成立しました
2011年6月28日,B型肝炎訴訟の原告団・弁護団と国との間で,集団予防接種によるB型肝炎被害者に対して,国が法的責任を求めて正式に謝罪し,被害者を和解によって救済する基準などを定めた「基本合意」が成立しました。
我が国のB型肝炎持続感染者約100万人のうち,40数万人が,今回の基本合意に基づく救済対象者(集団予防接種による感染被害者)である可能性があります。
上記「基本合意」について支払われる和解金は,次のとおりです。
① 死亡,肝がん,肝硬変(重度) 3600万円
② 肝硬変(軽度) 2500万円
③ 慢性肝炎(④又は⑤に該当する者は除く) 1250万円
④ 慢性肝炎(発症後提訴までに20年を経過したと認められる者のうち,現に治療を受けている者等) 300万円
⑤ 慢性肝炎(発症後提訴までに20年を経過したと認められる者のうち,④に該当しない者) 150万円
⑥ 無症候性キャリア(⑦に該当する者を除く) 600万円
⑦ 無症候性キャリア(提訴までに20年を経過した者)
50万円
4 個別の被害者救済の認定要件
以下に記載した要件が,「基本合意」に基づく個別の被害者救済の認定要件の概要です。
① 昭和16年7月2日から昭和63年ころまでの生まれであること(昭和23年7月1日の予防接種法施行時に7歳未満であったこと)
② B型肝炎ウイルスの持続感染者であること(B型肝炎ウイルスのキャリア,慢性肝炎,肝硬変,肝がん,死亡)
③ 満7歳までに集団予防接種を受けたこと(母子手帳がなくても提訴可能)
④ 母子感染ではないこと(母親がキャリア等ではないこと)
⑤ 集団予防接種被害者である母からの感染=「2次感染被害者」も救済の対象となります。
心当たりのある方は,B型肝炎訴訟大阪弁護団の常設電話相談(06-6647-0300)まで御連絡下さい。