弁護士 村田浩治
2005年10月に始まった「偽装請負事件」松下(現パナソニック)プラズマディスプレイパネル事件に関し、2009年9月14日、最高裁第二小法廷は、口頭弁論を開くことを決定し、11月27日、最高裁での口頭弁論が行われました。
この原稿を書いている時点では、口頭弁論さえまだ終わっていないが、ニュースがお手元に届くころには、判決が出されているかもしれません。
2005年4月、相談にやってきた吉岡力くんは当時は31歳、いわゆるロストジェネレーション世代です。若いときから、派遣(偽装請負)の社員として東芝や松下などの大企業の工場を渡り歩いて使い捨てのような働き方をしていました。松下プラズマディスプレイパネル茨木工場で働き始めたのが2004年1月のことでした。お父さんを亡くされて休んでも「欠勤扱い」という待遇に耐え、ここでは定着してやっていこうと懸命に働いていました。しかし、一年たったら時給の低い別の請負会社に移籍しろと松下の班長に指示され、疑問を呈すると「文句を言っているのはお前だけ」と言われました。自分の働き方が偽装請負であると知って労働組合に入り団体交渉をして直接雇用となりましたが、五ヶ月でもって雇い止め、その間、同僚から隔離され、一人でパネルについた塗料を竹ぐしで剥がす作業をさせられました。
2007年4月、一審大阪地裁は、嫌がらせに対する慰謝料は認めたものの、使用者として雇い続ける責任は否定したため大阪高裁に控訴したところ、大阪高裁は翌年4月に一審判決を取消し、パナソニックに使用者としての責任があることを認め、約1000万円の未払い賃金の支払も命じたのです。最高裁は、この大阪高裁判決に対して弁論を開くというもので、最高裁が高裁の判決を覆して労働者を任せるのか、パナソニックの責任を認める基準を示すのか注目されています。
政権交代後の政府が、派遣法違反の企業の雇用責任を認める事の出来る法案を作るか否か議論となっており、また全国で同種の裁判が次々と起こっている中で、4年前の提訴時にはなかった社会的注目を集めています。いずれの結果でも非正規労働者の権利向上となるよう運動と結びつけることが重要です。関心をもって報道に注目し、運動にご参加下さい。