堺総合法律事務所

 

事件ファイル


シャープ立地への公金支出を正す住民訴訟の意義

弁護士 平山正和

 

2009年7月24日,大阪府民134名、堺市民100名が、私たちも弁護団に参加して、府知事と堺市長を被告とし、シャープへの公金支出をただす住民訴訟を提起しました。世界最大の大型テレビ用液晶パネル及び太陽光電池の工場に、関連する部材・装置メーカー「フルセット」で誘致する「21世紀型コンビナート」を標榜し、2007年11月に着工し、2009年10月に既に製造が始まっています。

 大阪府知事は、シャープとその関連企業3社に対して,10年間に、最終的に総額330億円にのぼる補助金等の支出をしようとしています。堺市長は、シャープなど関連5社に対し10年間で、総額504億円(堺市の発表では240億円)もの税金の減額をし、それに加え、堺駅からシャープ門前までLRTを敷設しようとしています。

 それ以外に、シャープのための道路敷設、耐震護岸、上下水道、高速道路などのインフラ整備に5千億円とも言われる税金を投入しようとしています。

 原告や弁護団は、シャープへのこのような公金の支出は公益上の必要性が認められず違法であるとして、差止を求めています。その理由は①シャープの立地と補助金等の支出との間に因果関係がないこと、②大阪府・堺市が公表している波及効果についての説明は、趣旨や根拠が不明確であり、シャープ立地によって,住民にいかなる経済的利益をもたらすのか具体的に明らかにされていないこと、③財政再建を必要としている大阪府、高い公共料金を市民に負担させている堺市の財政状況に照らして相当ではないこと、④堺市への地方交付税が減収となること、⑤シャープは営利を目的とする私企業にすぎないこと、⑥中小零細企業と比較して公平性、平等性を欠如していること、⑦使途が明確でないことなどを、総合すれば公益上の必要性はありません。

三重県亀山市のシャープ亀山工場に県市で135億円を補助したことを嚆矢として、全国の自治体が業誘致を口実にして大企業に補助金を支出することを競い、「誘致合戦」が展開される異常な事態に異議ありの声をあげて、流れを変えるきっかけをつくることも目的にしています。

 大企業誘致と公金の使途のあり方を問う前例のない住民訴訟ですが、同じ問題をかかえている地域の方々とも連携しながら闘っていきます。ご支援をお願いいたします。

 


 
 
 
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