初芝学園の経営民主化に貢献
弁護士 岡崎 守延
少し遅くなりましたが、初芝幼稚園の先生達の賃金差別事件勝訴判決について御報告します。
御承知のとおり、初芝学園では、以前の経営者が株取引の失敗で多額の借金を負い学園経営を継続することができない事態に陥りました。そこに、外食チェーン杵屋の社長椋本氏が新たな理事長として経営に関わることになりました。
椋本氏は労働組合の活動を全く認めようとせず、教職員の労働条件切り下げによって「経営の建て直し」をはかろうとしました。
その中で、初芝幼稚園の先生に一番のしわ寄せがいく形となりました。椋本氏は、初芝幼稚園の先生達に対して、他の教職員よりも一層低い給料・賞与の減額を打ち出し、それによって組合員の先生達に退職を迫るという対応を取りました。幼稚園の先生達は、幼稚園の存続を優先させるために、不本意ながらこの提案を受け入れました。
ところが椋本氏は、学園の経営が大幅に改善したにも拘わらず、幼稚園の先生達の給料・賞与を元に戻そうとしませんでした。
そこで幼稚園の先生達は、この不利益扱いに対し、不当に減額されたままの給料未払分の支払を求めて、裁判所に提訴しました。
第一審の判決では、残念ながら先生達の請求は認められませんでした。先生達は、大阪高裁に控訴して闘いを続けました。
先生達・弁護団は、高裁でも厳しい判決を予想していたのですが、何と蓋を開けてみると、完全逆転の勝訴判決がだされたのです。学園側は最高裁に上告しましたが、上告は認められず、先生達の勝訴判決が確定しました。
そして、丁度この裁判が進行している最中にこれと平行して、マスコミに学園運営における椋本氏の問題行動が次々と報じられるようになりました。結局椋本氏は、このような世論の批判によって、初芝学園の理事長を退任することを余儀なくされました。
椋本氏は、学校経営に民間企業の手法を持込み、教師を全て「杵屋」(うどん店)採用とした上で初芝学園に出向させるというようなことまでやってきました。このようなやり方は、全国的に見ても例のないことです。椋本氏は、教師に対し「組合に入ったらうどん屋(杵屋)に戻す」などと公言して、教師が組合に入ることを妨害してきました。また教師も、このような「出向」の身分では、安心して教育に打ち込むことはできません。
しかし、この「教師出向制」も、世論の強い批判をあびて、撤回されることになりました。大阪労働局は、この「教師出向制」に対し、違法派遣に当たるとして是正指導を行いました。
約10年に渡って闘われてきた初芝学園の民主化闘争は、ここに画期的な解決を見るかたちで、2008年(平成20年)に終結を迎えることができました。
初芝学園の訴訟事件は、この幼稚園の先生達の事件の他にも3件が闘われ、全て勝訴となっています。幼稚園の先生達の闘いは、このような学園の民主化の運動に大きな力となったと思います。