堺総合法律事務所

 

事件ファイル


マンション手抜き工事に建設会社が賠償(2006年度)

弁護士 岡崎 守延

1、堺市内の分譲マンションで、床下排水管に多数の破断、亀裂などが生じるという被害が発生しました。この排水管の破損は、1階各部屋のほぼ全面に広がり、破断部分から汚水などが漏れて異臭が住戸内に広がるなどの被害が発生しました。
2、住民は、当初は原因が分からなかったのですが、建築士に床下排水管の調査を依頼したところ、排水管の破損が判明しました。そこで住民は、マンションを建築した清水建設㈱と、分譲業者のトーメン不動産㈱に対し、補修工事費の賠償を求めることにしました。
3、住民は、早期に話し合いで解決したいと考え、まず簡易裁判所に調停の申し立てをしました。しかし清水建設らは、「工事にミスはない」「排水管の破損は阪神大震災が原因だ」などといって、全く話し合いに応じようとしませんでした。
4、そこで住民は、やむなく裁判所に、損害賠償を求める訴訟を提起しました。住民側は訴訟で、排水管の破損が1階床下のほぼ全面に渡り、多数の箇所に及んでいることから、部分的な要因によるものではなくて、構造的な清水建設の手抜き工事が原因であると主張しました。専門家(1級建築士)にも調査を依頼したところ、床下の掘削工事を行った際の埋め戻し土の転圧不足が原因で、床下排水管が沈下して破損したとの意見が提出されました。
5、これに対し清水建設側は、「工事にミスはない」「排水管の破損は阪神大震災が原因だ」を繰り返すだけでした。しかし、阪神大震災によって、堺市内に大規模な排水管の破損が発生したという報告は、一部の埋立地を除いて、全くなされていません。阪神大震災を理由に責任を免れようとする清水建設側の主張は、全く根拠のないことが明らかでした。排水管の破損は明らかな事実であるのに、「阪神大震災」以外に原因を指摘できない清水建設側の主張は、住民側の主張と比べて明らかに説得力のないものでした。
6、このような審理を経て、判決を直前に控えた段階で、裁判所によって和解のあっせんが行われました。この段階でも清水建設側は、依然として「工事にミスはない」という態度を続けていたのですが、裁判所から「工事のミスは否定し難い」と指摘され、ようやく和解を受け入れることになりました。
7、この様にして成立した和解は、排水管の補修工事代の大半部分を清水建設側が負担するという内容になりました。このようなマンションの建築の欠陥を巡る訴訟は、住民が多数のために、管理組合の役員の方に負担が多くかかる形となります。このマンションの役員の方々は、訴訟の途中で役員の交替がありながら、最後まで粘り強く解決にもっていかれたもので、そのことが和解成立の大きな支えとなったと思います。


 
 
 
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