弁護士 岡崎 守延
一 大阪初芝学園では、引続き、労働組合敵視、法律無視の学園経営が続けられています。既に御承知のとおり、初芝学園では、労働組合が法人の違法行為是正を求めて、2件の地労委、裁判所への申立がなされています。そして今回、新たに3件目の申立が裁判所に提訴されました。
二 1件目の地労委の事件は、初芝橋本校に異動した教師が、同校で労働基準法が全く遵守されていないことに直面し、その是正を求めるべく労働組合に加入したところ、法人がこれを嫌って、同教師からクラス担任、授業担任を取り上げ、隔離部屋のようなところに閉じ込めるという不当処分を行っている事件です。
法人は、この様な違法状態を、既に4年も続けており、地労委の審理は既に終わって決定を待つ段階となっていますが、法人はこの不当処分を撤回する意思を全く示していません。
三 2件目の訴訟事件は、法人が、初芝橋本校に勤務してきた労働組合員の職員について、就職後長期間に渡り昇給を一切しないという就業規則違反の対応を続けたばかりか、定年退職時にも定められた退職金を一切支払わないという不当な措置に及んだことに対し、未払い給料、退職金の支払を求めているものです。
この事件は、既に大阪地方裁判所堺支部において、労働組合員の請求を基本的に認める判決がなされていますが、法人はこれに全く従おうとせず、控訴して争っています。
四 そして、今回新たに本年5月に提訴した事件は、初芝学園の幼稚園に勤務してきた先生たちに対し、法人が、法人自身のずさん経営を原因とする経営危機を理由に、1993年(平成5年)以降昇給を停止し、賞与も学園の高校教師などに比べて大幅に減額し続けてきたことに対し、未払給料などの支払を求めている事件です。
法人は、この経営危機の負担を幼稚園の先生に特に強く押し付け、その後に経営状態が改善されてきた後も、この不当な昇給停止、賞与減額措置を続けてきたものです。
五 以上のとおり、初芝学園は現在、職員ないし元職員との間で、3件もの係争事件を抱えています。子供らに安心して学業に専念できる環境を提供すべき教育機関において、このような状態は甚だ異常と言わなければなりません。
御存知のとおり、初芝学園の現在の経営者は、外食産業のチェーン店を営む企業家です。初芝学園では、数年前から「教員の出向制度」として、教員をまずこの外食産業の社員として雇傭し、これを初芝学園に「出向」させるという雇傭形態を導入しています。この方式で採用された教師は、法人に楯突けば、たちまち「出向」を解かれて外食産業の社員に戻されることから、学園でいかに不合理なことが行われても、異議申立をできない状態に置かれています。この為、新たに採用された教師が労働組合に加入するなども皆無の状態です。
この現在の経営者は、自身の書物などでも、公然と労働組合への否定的意見を表明しています。
このように、教師が自由に自身の意見すら表明できない状態は、教育現場として見逃せない問題を含んでいます。
六 地域の皆さんには、個々の係争事件への支援に止まらず、この様な初芝学園の不合理な運営制度に対しても、引続き批判と監視の声を上げて戴きますよう、御協力を宜しくお願い致します。